1962年、ラルフ・ギンズバーグ(編集者)× ハーブ・ルバーリン( グラフィックデザイナー)の黄金コンビによって創刊された伝説的な『EROS』。「愛とセックスの喜び」を捧げたこの季刊誌は、センセーショナルな内容からギンズバーグはわいせつ罪で起訴され、たった4号で廃刊に追い込まれた。
『エロス』は、歴史、政治、芸術、文学におけるセクシュアリティを幅広く取り上げ、モーパッサンやアレン・ギンズバーグなどの作品や記事を掲載。過剰な抑圧からの解放、芸術の神聖性の排除、人種平等、反戦などの社会的メッセージを発信したことから、1960年代後半のカウンターカルチャー形成に貢献し、アメリカの出版史上重要な雑誌とされている。
『エロス』は全号ハードカバーで、ルバーリンによるヴィジュアル・デザインは今なお色褪せていない。中でも一番人気は、マリリン・モンロー (Marilyn Monroe, 1926–1962, 36) が表紙を飾った第3号。カメラマンはバート・スターン(Bert Stern, 1929–2013, 83)で、モンロー最後のスタジオ撮影となった。「×」マークがつけられた写真は、モンローがダメ出しし自身が書き込んだものである。
この撮影でモンローの美しさ、まぶしさを捉え切れていないと感じたスターンは、後に『アヴァンギャルド』第2号でサイケデリックなシルクスクリーンを発表した。
Avant Garde Magazine #2, March, 1968
ラルフ・ギンズバーグ(1929年10月28日 – 2006年7月6日 76歳)は、ロシア系ユダヤ人移民の両親のもとブルックリンで生まれた。ニューヨーク市立大学で会計学を専攻した後、編集者・ジャーナリストになった。55歳で出版業界から引退し、『ニューヨーク・ポスト』紙のフリーランス・フォトグラファーとして活動した。多発性骨髄腫のため76歳で他界。
創刊した雑誌
2018年にアメリカのデザイナー兼研究者ミンディ・スー (Mindy Seu, 1991– ) によってデジタル化され、閲覧することができる。タイトルをクリック。
Eros | 1962年 | 季刊・全4号 | 文学・政治批評 |
fact: | 1964年1月–1967年8月 | 季刊・全22号 | 政治批評 |
Avant Garde | 1968年1月–1971年7月 | 全14号 | 芸術文化 |
ハーブ・ルバーリン(1918年3月17日 – 1981年5月24日 63歳)は、アメリカの伝説的なグラフィックデザイナー。今もなお強力な影響力を持ち、『エロス』『ファクト』『アヴァンギャルド』3誌すべてをアートディレクションしたことで知られている。
1945年、広告代理店 Sudler & Hennesey の副社長に就任し、500を越える数々の賞を受賞。1970年、タイプフェイス・デザイン会社 International Typeface Corporation (ITC) をタイポグラフィの権威ア-ロン・バーンズ (Aaron Burns, 1922–1991) 、Photo-Lettering, Inc. のエドワード・ロンターラー (Edward Rondthaler, 1905–2009) と共同設立。同社は書体の販売、ロゴやパッケージデザインなどを行い、アヴァンギャルド誌のロゴをフォントにした「Avant Garde Gothic」をリリースした。
当時、世界的に有名なニューヨークのデザインスタジオ Chermayeff & Geismar, Milton Glaser, Pentagram, Push Pin, Vignelli ですら書体デザインは行っておらず、ITC は他に類を見ない画期的な組織であった。
「彼の体重は105ポンドだったが、その創造性はヘヴィ級だ」CBS 副社長兼クリエイティブ・ディレクター ルウ・ドーフスマン (Lou Dorfsman, 1918 – 2008) の言葉